『ひにひに』TOP画/森和美

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  • 備忘録

    category:日記

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 すっかり夏バテして過ごしたこの夏でしたが、これまで行ったことのない土地への小旅行は果たせた夏でした。
 昨年は私が初連載で多忙を極め、ほとんど自宅兼職場で季節が過ぎてゆきました。ずっと気が張っていたお陰か、夏バテをしなかったかしていても気づく間もなく過ごしていた昨夏ですが、今年は違います。しっかり夏バテも意識し、季節の移り変わりも認識し、バテたバテたと言いながらも外出を楽しむ機会も設けられています。

 8月初旬は宮城県に一泊二日の旅行をして来ました。
 私も夫も宮城県にはこれまで行ったことがありませんでした。実は、あちこち旅行する余裕が出来たのはここ数年のことで、私たちはいい年頃の中年夫婦としては行ったことのない土地がたいへん多いのです。
 宮城に何をしに行ったかというと、夫の叔父が宮城県石巻市で震災復興事業に就いたというので、夫婦ともに仕事が一区切りついている(漫画家家業の場合、連載がない期間というのは無職というわけではありますが)この機会にと、叔父さんに会いに出掛けたのです。

 レンタカーを借り、愛犬をペットホテルに預け、常磐自動車道で東北へと。
 常磐道は東京~仙台を太平洋沿岸に沿うルートです。私たちは常磐道をドライブするのも初めてでした。
 今回の旅の目的のひとつとして、まだ見たことのない被災地の現状を見てみたい、という思いもあったとはいえ、常磐道にしかないという線量表示板(リアルタイムの放射線量を表示する電光表示板)や、二輪車通行不可の区間があったこと(バイクは車のように空間を密閉出来ないため)、あちこちに置かれた黒い袋の山(放射能汚染土を入れた除染袋)や、大熊・双葉・浪江町の帰還困難区域を通った時に目にした景色には想像以上に胸に迫るものを覚えました。
 常磐道の両脇に急に開けた原野のような農村地帯。ところどころに点在する農家の家屋もビニールハウスの骨格も農機具も、生い茂る雑草に飲み込まれかけ、電柱には蔦が絡まっていて、農道を通る車はありません。本来は手入れされた田畑が広がっていたのだというのは、周囲の山や森よりは背丈の低い雑草や家屋の様子から分かるのですが、人の気配がなく荒れた土地が広がっていました。
 私は父方母方どちらも祖父母の代まで農家で、今でも営農する親戚もいて、北海道の農村を見ながら育ちました。とはいえ、自分自身はとてもずぼらで庭の手入れをするのも好きではありません。そんな私でも、本来耕され季節ごとの作物の彩りを迎えるはずの農地が放置されて雑草に覆われ年数を経ている姿がどこまでも続いている、という風景には、衝撃を覚えたのです。
 「農村」というのは当たり前ながら「手付かずの自然」ではありません。いくら緑が多くても、それは「自生した植物」ではなくて「人が植えた農作物」で、人が手をかけている人里なのです。手入れされた農地には人の営みがあります。その「手をかけて作付けする」ことが出来ない農地が広がっているというのは、うまく言えないのですが、胸をしめつけられる光景でした。
 齢90になってもまだ庭で野菜や花を育てるのを生きがいにしている祖母や、農家で生まれ育った両親が見たら、私なんかよりよほど衝撃を受けるのだろうな、とか、ここに住んでいた人たちにとってはどれほどか…とだけ、ようやく考えながら通過して来ました。

スケッチ

 福島の絵も描こうとしてさらっとは描けないなと思って、印象的だった宮城の森を。宮城県の景色がとても心地好かった。

プロフィール

森 和美

Author:森 和美
かけだし漫画家。
2013年6月講談社イブニング掲載の『おうちにかえろう』でデビュー。
イブニング2014年№18より2015年№12まで『エシカルンテ』連載。
別PN=港崎 和(妻) 実写映画『GANTZ PERFECT ANSWER』(2011年公開)内で似顔絵執筆。

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